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第3回 『糖尿病コントロール指標の"HbA1c"とは』

2008年01月04日

 糖尿病コントロールの指標としてよく用いられているものに、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、グリコアルブミン、1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)などがあります。今回はヘモグロビンA1cについて考えてみたいと思います。

★ヘモグロビン

 ヘモグロビンは赤血球の主要な構成成分で赤血球乾燥重量の約90%を占めています。機能は肺で酸素を受けとり組織に酸素を運搬する機能をもつ重要なタン パクです。日本語では血色素と言われています。赤血球の寿命は約120日で正常ヘモグロビンは分子量64,500で4分子のヘムと2対のグロビン・ペプチ ド鎖からなっています。4つのサブユニットから成るヘモグロビンは各サブユニットが正四面体の頂点に位置するような配置をとってヘモグロビン分子を形成し ています。

★HbA1cの歴史的背景

 HbA1Cが日常の臨床に応用される前に基礎的な研究がありました。一つ目の研究は食品化学の領域でブドウ糖(グルコース)とタンパク質のアミノ酸が非 酵素的に結合が起こることが知られていて、これは糖化反応あるいはメイラード反応と呼ばれていました。もう少し詳しく言いますとブドウ糖や果糖(フルク トース)はタンパク質のアミノ酸と化学的に反応します。この反応は生体内でも起こり酵素の働きを介する生化学的反応による糖化 (glycosylation)と酵素の働きを介しない非酵素的糖化(glycation)に分けられます。この非酵素的糖化(glycation)は 1921年フランスのMaillardがこれらの反応を化学的に初めて明らかにしたことよりメイラード反応とも呼ばれています。
 糖化物は一般に茶色で蛍光反応を示すことがわかっていましたが、コカ・コーラの主成分といわれています。この反応は二つのステップからなっていて少しむ ずかしいかもしれませんが第一ステップはschiff baseで結合してアルジミンとなる反応で比較的速やかで可逆的(不安定型)です。次のステップはアルミジンがアマドリ転位してケトアミン(アマドリ化合 物)に変わる反応(安定型)です。この反応は緩やかに進みほとんど不可逆的です。アマドリ化合物はglycated proteinのことでタンパク部分がヘモグロビンである場合がglycated(糖化)ヘモグロビンです。
 第二の研究は異常ヘモグロビン血症について高速液体クロマトグラフィーで研究されていたときにある部分が糖尿病患者さんで高いということがわかり、高血糖で上昇する成分があることがわかりました。それをA1cと名前をつけたことに始まります。

★糖化ヘモグロビン

 glycated proteinはそのタンパクの存在期間の平均的血糖値に依存して生成されます。したがって用いるタンパクの半減期によって異なった期間の血糖値を推定す る指標がわかります。糖化ヘモグロビンはヘモグロビンのアマドリ化合物ですが、アマドリ化合物はさらに酸化反応や分子間反応により不可逆的構造物を形成し ますが、これを非酵素的糖化後期反応生成物(advanced glycationn endproduct:AGE)といっています。
 ヒトの血液中にはたくさんのタンパク質がありますがヒト赤血球に存在するヘモグロビンにグルコースが糖化反応を起こしたものが糖化ヘモグロビンで検査項目でいうヘモグロビンA1c(HbA1c)になります。

★HbA1c値に影響を与える要因

 HbA1c値が異常に低値になる原因の一つに赤血球寿命が短くなる状態があります。例えば原因は別にして貧血があると(貧血の程度によりますが)、血糖 値が非常に悪いのにHbA1cの値は高くならず低くなってしまいます。場合によっては正常範囲になることがあります。貧血のある時はHbA1c値をそのま ま受け入れてはだめだということです。逆にHbA1c値が異常に高くなる病態もあります。腎不全・アルコール中毒・異常ヘモグロビン血症などです(但し異 常ヘモグロビン血症ではHbA1c値が異常に低値になる場合もあります)。この様に血糖値がいつも悪いのにHbA1cが良い値あるいは血糖値がいつも良い のにHbA!cが高いというのは変だと考えて原因の検索が必要になります。

★赤血球に対する高血糖の影響

 高血糖が持続して赤血球中のヘモグロビンA1cは、グルコースが非酵素的にヘモグロビンに結合して増加してきます。機能から考えると厳密にはヘモグロビ ンの酸素結合能を増加させて酸素解離能が低下するといわれています。正常人のHbA1c濃度は全ヘモグロビン量の4.3~5.8%で糖尿病コントロール不 良のケースでもHbA1c濃度が十数%までにとどまることから考えるとHbA1c高値での呼吸への悪影響が生じる可能性はほとんど考えにくいといわれてい ます。

★過去の血糖値の影響について

 赤血球寿命が約120日なので、HbA1cは120日前までの血糖値を反映します。過去の血糖値の影響は一定ではなく最近の血糖値ほど大きく影響します。
 HbA1cに対する過去の血糖値の影響の程度は、直前の一ヶ月間の血糖が約50%、その前の一ヶ月間の血糖が約25%、2~4ヶ月前の血糖が約25%で す。したがって血糖値が急速に変化した場合HbA1cは約一ヶ月の半減期で変化するので血糖値コントロールの変化を早期にとらえるのには良いマーカーでは ないことになります。HbA1cの変動は血糖値の変動よりも時間的にかなり遅れるため、血糖値が変動する時は血糖値とHbA1cは乖離します。

★まとめ

 血糖値を考えるとき採血時間が早朝空腹時なのか食後なのか(食後から採血までの経過時間)の確認が必要ですし、食後に運動した場合あるいは採血前の食事 量が僅かしか食べていないなどでも血糖値は変動するので時間の確認は必要です。しかしHbA1cは食事の有無や採血の時間では変動しません。HbA1cは 主に過去約2ヶ月の血糖値の変動を反映し、HbA1c値に影響を与える要因があって血糖値の変動に対して敏感なマーカーではないということです。皆様の何 かの役に立ちましたら幸いだと思っています。

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