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<外科 大場豪>NIKKEI プラス1「カラダづくり」で解説

2021年07月14日

虫垂炎は夏に多いそうです。薬での保存的治療をめざすには早期診断が重要。
当院の大場豪外科科長が解説しています。(2021/7/3 NIKKEIプラス1掲載)
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一般に盲腸とも呼ばれる虫垂炎は幅広い年代がかかる病気だ。かつては手術が中心だったが、最近は薬による治療を選ぶケースが増えている。独特の痛みの出方があり、疑いがあれば早めに医師に相談したい。

腹部の違和感が痛みに変わり、徐々に強くなって右下腹部に移ってきた。吐き気もあって耐えられない。虫垂炎の典型的な症状だ。

虫垂は大腸の一部、盲腸から細長く突き出た部分。虫垂炎の原因は完全に解明されているわけではないが、腸の内容物の固まったものなどで虫垂が塞がれ、血流が悪くなったり、細菌が繁殖したりして起こる場合が多いようだ。

外科医の間では経験的に「梅雨明けの暑い日に患者が増える」と言われてきた。岩手県立中央病院(盛岡市)の研究グループは手術治療した450例の気温、気圧との関係などを調べた結果を2018年に発表。宮田剛院長は「患者数は冬(11~12月)に比べて夏(7~9月)の方が明らかに多かった。気圧より気温の変化と関連していることも分かった」と解説する。

夏に多い虫垂炎。対処法としては虫垂を切除してしまう手術治療、抗生物質などを使って炎症を抑える保存的治療がある。かつて日本では手術治療が中心だった。ただ超音波検査やコンピューター断層撮影装置(CT)の普及で虫垂の状態を正確に診断できるようになり、保存的治療が広がってきたという。

天使病院(札幌市)の大場豪外科科長は「虫垂炎は炎症が粘膜にとどまっている状態(カタル性)から、虫垂の壁にまで広がった状態(蜂窩織(ほうかしき)炎性(えんせい))へと進む。さらに壁が壊死(えし)して腹膜炎を起こすこともある」と説明する。腹膜炎を起こすほどだと緊急手術が必要だが、軽症から中等症の初期であれば、薬での治療を目指せるという。

だからこそ保存的治療には早期診断が重要になる。虫垂炎の初期は痛みが内臓神経によって上方向に伝わり、みぞおちの痛みとして始まる。4~6時間後には強い食欲不振や吐き気などを感じるようになる。やがて痛みはへそと右の腰骨を結ぶ線上の腰骨側から3分の1ほどのポイントへと移る。虫垂炎は他の腹痛と異なり、このポイントを指で押したり、右足で軽くジャンプしたりすると強く痛む。

症状は患者により違い、様子を見ていて腹膜炎を起こしかけた例も。経験のある医師なら触診などで診断がつく。

保存的治療を考える場合、悩ましいのは再発だ。4人に1人ほどの割合で再発する可能性があるとされる。

相談を受けたとき、大場外科科長は「再発するのは1年以内が多い。受験生では試験直前に再発するリスクを防ぐため、手術治療を勧めることがある」と話す。

大阪大学大学院の竹田潔教授(免疫制御学)は「無用の長物だと考えられてきた虫垂が重要な免疫器官だと分かってきたことも不要の手術を減らす動きにつながった」と指摘する。竹田教授は虫垂が粘膜の免疫機能を活性化し、大腸の腸内細菌のバランスを保っていることを解明。「研究を日本人に増えている炎症性腸疾患の治療法開発につなげたい」と強調する。

虫垂炎については発症や再発のメカニズム、予防法などさらなる研究が求められている。食物繊維を多く取る人は発症リスクが低いという研究結果があり、宮田院長らの文献調査でもこの内容をサポートする論文が多かった。「食物繊維をしっかり取り、規則正しい食生活で便秘を防ごう」と助言する医師が多い。

若い人に多い印象があるが、高齢者まで幅広く発症する可能性がある。いざというときに備え、初期症状など基礎知識を知っておきたい。
【引用元】NIKKEI STYLE

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