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「小児の滲出性中耳炎」について

2005年09月01日

 今回は前号に引き続き、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎についてQ&A方式でまとめてみました。小児の滲出性中耳炎も非常に多い病気で、急性中耳炎が十分に治りきらないと滲出性中耳炎に移行してしまいます。放置すると難聴の原因になってしまうこともあり、きちんとした治療が必要です。

 

Q)滲出性中耳炎とはどんな病気ですか。

A)鼓膜の奥の中耳腔に滲出液がたまる病気です。10歳頃までに多くみられます。子どもの難聴の原因では一番多いものです。

 

Q)どうして滲出性中耳炎になるのですか。

A)一番多いのは急性中耳炎が十分に治りきらずに、鼓膜の内側の膿(うみ)が滲出液となって中耳腔に残ってしまう場合です。中耳炎の膿は中耳の粘膜から吸収されたり、耳管(中耳腔と鼻の奥をつないでいる管)をとおって、鼻の奥に排出されるのが普通ですが、小児では耳管機能が未熟なため、排出がうまく行われず、滲出性中耳炎になりやすいとされています。また、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの鼻の病気やアデノイドが大きい場合などでは、さらに耳管の働きが悪化して、滲出性中耳炎になりやすくなったり、滲出性中耳炎が治りづらくなったりします。
滲出性中耳炎で中耳にたまっている液体は、中耳の粘膜からしみ出たものです。鼓膜に穴があいていないかぎり、水泳や洗髪で耳(外耳道)に入った水が中耳にまで入ることはありません。

 

Q)どのような症状がでるのですか。

A)急性中耳炎と違って、強い痛みや発熱を伴なわないのが滲出性中耳炎の特徴です。大人であれば耳の閉塞感や耳鳴りを訴えますが、小児では難聴が唯一の症状であることも多く、難聴の程度も軽い場合が多いので気づくのが遅れてしまうこともよくあります。
難聴は、日常生活ではテレビのボリュームを上げる、呼んでも返事をしないなどで気づかれます。

 

Q)どうやって診断するのですか。

A)耳鼻科で鼓膜の状態をみたり、専門的な検査の結果によって診断します。鼓膜をとおして中耳にたまった液体を確認できることもあります。聴力検査や鼓膜の動きの検査によって、病気の程度もわかります。

 

Q)どのような治療をするのですか。

A)中耳にたまっている滲出液をなくして聴こえをよくするための治療が第一ですが、耳管機能に悪影響を与える副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの鼻の病気に対する治療も並行して行うことが大切です。
耳に対する治療では、まずは滲出液の排出を促すような消炎酵素剤による内服治療を行います。鼻やのどに炎症がある場合は抗生剤も使用します。しかし治りが悪い場合や聴こえの状態がかなり悪い場合は、鼓膜を少し切って中耳腔にたまっている滲出液を排出させる鼓膜切開術を行います。しかし何度も滲出性中耳炎をくり返す場合は、鼓膜にチューブを入れる手術がよく行われます。

 

Q)滲出性中耳炎は治りますか。

A)適切な治療をうければ、ほとんどの場合は完全に治ります。ただし、治療には時間がかかる場合も多く、根気強く通院する必要があります。耳鼻科医の指示に従って治療を受けてください。不十分な治療などのために、あとで入院手術が必要になる癒着性中耳炎や、真珠腫性中耳炎になってしまうこともときにありますので放置することは避けてください。

 

Q)鼓膜切開術とはどんな手術ですか。

A)滲出性中耳炎に対して行われる鼓膜切開術は、鼓膜の内側にたまっている液体(滲出液)を吸い出すことで聴こえをよくするとともに、中耳の風通しを一時的によくして、中耳の粘膜の状態を改善する目的で行われる手術です。
鼓膜を麻酔してから、メスで鼓膜を数ミリだけ切開します。大きな音は感じますが、痛みはほとんど感じません。耳鼻科外来で行います。鼓膜の穴は数日で自然に閉鎖し、鼓膜の状態は元に戻りますので、この治療で聴こえが悪くなることはありません。しかしながら滲出液がすべて排出される前にこの穴が閉鎖してしまい、治りきらないこともしばしばあります。


Q)鼓膜にチューブを入れる手術(チューブ留置術)はどんな手術ですか。

A)鼓膜切開術と同じ目的で、鼓膜に極めて小さなシリコン製のチューブを入れる手術です。チューブを入れることで、そうしないと数日で閉じてしまう鼓膜の穴が数カ月から1年以上開いたままにできるため、薬や処置でよくならない重症の滲出性中耳炎も治ります。しかし、再発してチューブをまた入れなければならない場合もあります。
方法は鼓膜切開術と同じで、切開して貯留液を吸い出してからチューブを入れます。小学生以上であれば外来でもできますが、乳幼児や未就学児では入院して吸入麻酔下で行うことが一般的で安全です。多くの場合鼓膜にできた穴は自然に閉鎖して、チューブは自然に抜けますが、とれない場合は中耳炎の治り具合をみながら抜くこともあります。その場合もチューブ留置術のために鼓膜にできた穴は、自然に、もしくはその後の処置でほとんど閉じます。

 

Q)スイミングスクールは休まなければなりませんか。

A)耳や鼻の病気に対してはプールがあまりよくないことは確かです。以前はなんでもだめということが多かったのですが、最近はその子の状態によっては滲出 性中耳炎の治療中でもプールに入ることは可能と言われています。また、耳栓をすることでもプールに入ることが可能になる場合もあります。いずれにせよ、そ の子の状態で変わりますので、耳鼻科で気軽に相談してください。

 


次回は小児の反復性中耳炎について解説をしたいと思います。

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